「俺のボトル、まだあるよね?」。半年ぶりに来た太客にこう聞かれて、棚を探しても見つからない。この瞬間に店が失うのは、ボトル1本ではありません。客を1人、失います。
ボトルキープのトラブルは、突き詰めればすべて「誰の・何を・いつから・どこに・あとどれだけ」の記録がないことから起きます。逆に言えば、タグと台帳でこの5つを押さえるだけで、紛失も取り違えも期限のもめ事も、ほとんど防げます。
期限を何ヶ月にするかより大事なのは、決めた期限をどう客に伝えるか。そして処分前の一本の連絡は、そのまま来店の誘い文句にもなります。まずは、もめ事の正体を3つに整理するところから始めましょう。
トラブルは3種類しかない
ボトルキープで起きるもめ事は、数えてみると3つに収まります。「ない」「違う」「もめる」です。
「ない」は紛失と誤廃棄。棚の奥に埋もれて存在を忘れられたボトルや、期限が来たと勘違いして下げてしまったボトルです。客が来店したときに出てこなければ、店が飲んだのかと疑われても反論する材料がありません。「違う」は取り違え。同じ銘柄のボトルが並んでいて、Aさんのボトルを別の卓に出してしまう。残量が減っていれば必ず気づかれます。「もめる」は期限切れの扱いです。客は「まだ飲めると思っていた」、店は「期限は過ぎていた」。どちらも正しいつもりだから、話がこじれます。
3つとも、原因は同じです。誰の何を、いつから、どこに、あとどれだけ預かっているのか。この記録がなく、手書きのタグと店長の記憶だけで運用しているから起きます。ボトルが20本なら記憶でも回ります。しかし記憶は棚卸しできません。人が変われば消えます。
預かっているのが数千円のハウスボトルなら、最悪その場で新しい1本を入れて収められます。しかし数万円のシャンパンや、もう仕入れられない銘柄となると、金額では解決できません。キープ本数の多い太客のボトルほど、記録がないときの痛手が大きくなります。守りたい客の酒から先に管理が甘くなるのが、この業務のこわいところです。
保管期間・期限ルールの決め方
ボトルキープの保管期間は、法律で決まった年数があるわけではありません。「◯ヶ月以上預からなければならない」「◯ヶ月で処分してよい」という条文は存在せず、店が自由に決めてよい部分です。相場感として3ヶ月から1年あたりに設定している店が多いものの、この数字自体にはさほど意味がありません。3ヶ月でも1年でも、決めた期限が客に伝わっていなければ、期限切れのたびにもめるからです。
期間の長さは、客層と来店間隔から逆算すると決めやすくなります。回転が速く一見客の多い店なら3ヶ月でも棚は回りますが、月に1回来るかどうかの太客が中心なら、3ヶ月は短すぎて期限切ればかりが積み上がります。逆に1年に設定すると棚の占有が長引き、キープ本数が増えたぶん探す時間も伸びる。自店の客が平均してどれくらいの間隔で来ているかを見て、その2〜3回分がおさまる長さにしておくと、実態と合いやすくなります。
期間を決めたら、延長の扱いもあわせて決めておきます。来店すれば期限を開封日から数え直す、期限内に連絡をもらえれば一定期間延ばす、といったルールです。現場で毎回その場の判断になると、キャストによって答えが変わり、「あの子は延ばしてくれた」というもめ事の種になります。
問題は「何ヶ月にするか」ではなく「どう伝えるか」。タグに開封日と期限の両方を書く。会計伝票に期限を印字する、あるいは口頭で「このボトル、来年の3月までです」と一言添える。店内にキープの取り扱いを掲示しておくのも有効です。ここまでやって初めて、期限は店と客の共通認識になります。
そして、期限切れで処分する前には一報を入れる。これは義務ではなく、店の得です。「キープのボトルが今月末で期限なんですが、どうされますか」という連絡は、そのまま来店のきっかけになります。黙って捨てれば信用を失い、連絡すれば来店動機が生まれる。同じ期限切れが、伝え方で正反対の結果になります。
期限切れボトルは誰のものか
「期限が過ぎたのだから、うちで処分していいはずだ」。現場ではそう考えがちですが、ここは一度整理しておく価値があります。ボトルキープは、客が代金を払って買った酒を、店が預かって保管している形が基本です。つまり中身は客の持ち物であって、期限が来た瞬間に自動的に店の所有物へ移る、と当然に言えるわけではありません。
実際の扱いは、店と客のあいだでどんな取り決めがあったかで変わります。「期限を過ぎたボトルは処分します」と事前に明示し、客もそれを認識したうえでキープしたのであれば、その合意に沿った運用と説明できます。逆に、どこにも書かれておらず口頭でも伝えていなければ、店の判断だけで捨てた根拠を示すのが難しくなります。同じ「期限切れ3ヶ月のボトル」でも、伝えていたかどうかで立場がまるで違うということです。
ここから先は契約の内容や個別の事情によって結論が変わる領域で、記事の一般論で断定できるものではありません。実務としてできるのは、争いになりにくい形を先に作っておくことです。具体的には次の3つがそろっていれば、話が食い違ったときに店側の説明が立ちます。
- キープの期限と、期限切れ後の取り扱いを事前に明示している(タグ・伝票・店内掲示のいずれか、できれば複数)
- 処分の前に本人へ連絡し、いつ・どの方法で連絡したかを記録に残している
- 実際に処分した日と、処分したボトルの銘柄・残量を台帳に残している
とくに3つめは抜けがちです。処分は「棚から下げて終わり」になりやすく、後から「あのボトルはどうなったのか」と聞かれても答えられない。下げた記録まで残して初めて、預かりの話が最後まで閉じます。高額なシャンパンや入手が難しい銘柄など、金額の大きいボトルの扱いで迷う場合は、自店のキープ規約とあわせて弁護士など専門家へご確認ください。
タグと台帳のダブル管理
タグだけの運用には限界があります。ボトルに巻いたタグは、氷や結露で濡れて字がにじみ、抜き差しで剥がれ、そのうちどのボトルの誰のタグか分からなくなる。タグは現物にたどり着くための目印であって、記録の本体には向きません。
本体は台帳に置きます。誰の、何を、いつから、どの棚に、あとどれだけ。この5つが並んだ一覧があれば、タグが剥がれても客の名前から探せますし、棚の場所からも引けます。紙のノートでもエクセルでも構いません。大切なのは、タグと台帳が同じ情報を二重に持っていること。片方が消えても、もう片方が残ります。
台帳には棚番号まで振っておくと、探す時間が消えます。冷蔵の3段目、常温棚のいちばん右、というレベルで場所を決めておけば、初めて入ったヘルプでも現物にたどり着けます。残量は「8割」「3分の1」でも、目盛りの写真でも構いません。数字の精度より、前回と比べられることが効きます。
取り違えクレームに強い店は、席にボトルを出すたびに残量をメモしています。「先週は半分あったのに、今日は3分の1しかない」という客の記憶に、店の記録で応えられる。逆にここが空白だと、減り方の疑いをかけられたときに、店は何も言えません。残量の記録は、疑われたときの唯一の証拠です。
期限切れは営業のネタになる
期限が近いボトルを持つ客のリストは、店が作れる来店動機の中でも強いものです。「そろそろ来てください」という連絡には口実が要りますが、「ボトルの期限が今月末なので」は口実そのものが自然に用意されています。客も、無視すれば自分の酒が消える。動く理由があります。
この連絡を機能させるには、期限が近い順に客を並べられる状態が要ります。台帳に期限が入っていれば、今月末までのボトルを持つ客を抜き出して、担当キャストから連絡してもらう。それだけで、放っておけば処分するだけだったボトルが、1回分の来店に変わります。
ボトルの期限を客ごとの記録と同じ場所に置いておくと、来店間隔が空いてきた客とボトルの期限を重ねて見られます。足が遠のいた客ほど、ボトルの期限を連絡のきっかけに使う価値がある。誰が・いつ来て・何をキープしているかを一つの台帳にまとめる話は顧客台帳システムで扱っており、離反の見極め方は常連客の来店が途切れる前兆で解説しています。
数が増えたら仕組みで
ボトルが100本を超えたあたりから、手書き台帳は崩れ始めます。棚の場所は入れ替わり、期限順に並べ直す手間が現実的でなくなり、キープ本数が多い太客ほど記録が追いつかなくなる。ちょうど、いちばん失いたくない客のボトルから管理が甘くなる、という逆転が起きます。
ここまで来たら、ボトルの記録は棚卸しと同じ台帳の上で扱うのが自然です。キープボトルも在庫の一部であり、店の酒とキープの酒が同じ棚に混ざって並んでいる以上、数え方をそろえないと在庫数も合いません。棚卸しの手順は酒・備品を棚卸しして発注につなげる手順で解説しています。
誰の・何を・どの棚・いつまで、を一覧で持ち、期限が近い順に並べ替えられる形にする。これを紙の台帳で回し続けると、ボトルが増えるほど書き写しと並べ替えの手間が積み上がり、担当が変われば引き継ぎからやり直しになります。その手間を引き受けるために、私たちは在庫管理システムを作っています。キープボトルを店の在庫と同じ台帳に載せ、客の名前からも棚の場所からも、期限が近い順にも引ける形にしました。いまの台帳運用のどこが重いか、相談だけでも構いません。
よくある質問
ボトルキープの期限切れは法律で決まっていますか?
いいえ、期限は法律で定められた年数ではなく、店が自由に設定できます。目安として3ヶ月〜1年程度に設定する店が多いですが、大切なのは期限そのものより、客に事前にどう伝えているかです。
ボトルキープの保管期間は何ヶ月にするのが一般的ですか?
3ヶ月・6ヶ月・1年のいずれかにしている店が多く、法律上の決まりはありません。回転が速く一見客の多い店は短め、月に1回程度の来店が中心の店は長めが実態に合いやすいです。自店の平均的な来店間隔の2〜3回分がおさまる長さを目安にすると決めやすくなります。
期限が切れたボトルは、店のものになりますか?
一概には言えません。ボトルキープは客が購入した酒を店が預かる形が基本のため、期限が来た時点で当然に店の所有物になるとは限らず、実際の扱いは店と客の取り決めや個別の事情によって変わります。期限と期限切れ後の取り扱いをタグ・伝票・店内掲示で事前に明示しておくことが、もめ事を避ける前提になります。判断に迷う場合は弁護士など専門家へご確認ください。
期限切れのボトルは店が自由に処分していいですか?
法的な扱いは契約や個別事情によって変わりますが、無断で処分するとトラブルになりやすいです。処分前に一報を入れる運用にすると、クレームを避けられるだけでなく、来店のきっかけにもなります。処分した日・銘柄・残量まで台帳に残しておくと、後から聞かれたときにも説明できます。
期限を延ばしてほしいと言われたら、どう対応すればいいですか?
延長の扱いも事前にルール化しておくと迷いません。来店したら開封日から数え直す、期限内に連絡があれば一定期間延ばす、といった形です。その場の判断に任せると担当者ごとに答えが変わり、「あの子は延ばしてくれた」というもめ事につながります。
ボトルの残量で客ともめたとき、どう対応すればいいですか?
「減っている」「減っていない」の水掛け論になりやすい場面です。席に出すたびに残量を写真やメモで記録しておくと、前回との比較を店側の記録で示せるため、疑いをかけられたときの根拠になります。
この記事の課題を、システムで解決するなら
「俺のボトル、まだあるよね」に、名前で即答する
お店専用の在庫管理システムなら、誰の・何を・いつから・どの棚に・あとどれだけを台帳で管理し、在庫と一緒に棚卸しできます。「俺のボトル、まだあるよね」と聞かれても、棚を探し回らずに客の名前からその場で答えられます。相談は無料で、導入前提でなくても大丈夫です。
画面も項目も、お店の運用に合わせて一から設計します。何をシステムにするか決まっていない段階のご相談も無料で承ります。
※ 画像は過去の開発例で、実際に開発する画面とは異なります。
画面は開発例です。項目・機能・デザインは、お店の運用に合わせて一から設計します。
在庫数と発注状況を同じ画面で共有し、欠品・発注漏れ・重複発注を減らします。
- 1スマホで棚卸し数を入力
- 2最低在庫から発注候補を判定
- 3発注・入荷状況まで共有

