締め日の夜、店長が電卓を片手に「たぶんこれで合ってる」とつぶやく。その一言を、給与明細を受け取ったキャストは信じるしかありません。

キャバクラの給与体系は、固定時給・スライド時給・バック・控除という性質の違う4つの部品を、対象・計算期間・率・適用開始日まで明文化して設計します。揉め事の多くは率の高さではなく、この4つが給与表の中で混ざり、誰も理屈を説明できなくなったときに起きます。

「時給3,000円+指名バック」だけだった表に、同伴バックやイベント特別バックを足していくと、この混ざりはどんどん進みます。まず自店の給与表にある項目を3つに仕分けるところから、誰が計算しても同じ額になる書き方まで見ていきましょう。

給与体系は3つの部品でできている

どれだけ複雑に見える給与表も、部品は3つしかありません。ベース時給、各種バック、そして控除です。それぞれ「何のための金か」がまったく違います。

ベース時給は出勤の対価です。席に座って接客できる状態でいてくれることへの支払いで、売上が振るわない日でも発生します。スライド制ならこの時給が小計に応じて動きます。バックは成果報酬です。指名、場内指名、同伴、ドリンク、ボトル、イベント。キャスト自身が生んだ売上に対して払います。控除は実費の精算です。遅刻分、厚生費、送り代、ヘアメイク代。ここは「払う」ではなく「差し引く」金であり、性質が前の2つと逆になります。

揉めるのはたいてい、この3つが給与表の中で混ざったときです。たとえば「遅刻したら時給を下げる」という運用は、出勤の対価であるはずの時給を、控除の道具に使っています。部品を混ぜると、キャストに説明したときに理屈が通らなくなります。まず、いま自店の給与表にある項目を、時給・バック・控除のどれかに仕分けてみるといいでしょう。どこにも入らない項目があれば、それが揉め事の火種になっています。

スライド制の設計

スライド制は、小計いくらで時給いくら、という階段を作る仕組みです。たとえば月間小計200万円までは時給2,600円、200万円を超えたら2,900円、300万円超で3,200円。刻みを細かくするほど頑張りが反映されて公平になりますが、そのぶん計算は重くなります。刻みが10段階もあれば、締めのたびに全員の小計を確認して段位を判定する手間も増えるでしょう。公平さと計算コストは、どこかで折り合いをつける必要があります。

曖昧になりやすいのが、判定期間と切替のタイミングです。スライドを月間で判定するのか、半月単位にするのか。月末に基準を超えた場合、月初へさかのぼるのか翌期間から適用するのかも決めます。体入時給からの切替日を含め、率だけでなく適用日を明文化します。

よく起きるのは、こういうズレです。あるキャストが月の後半で調子を上げて、月間小計が階段のひとつ上に乗りました。本人は「今月から時給が上がる約束だった」と思っています。店側は「上がるのは来月の出勤分から」のつもりでした。どちらも嘘はついていません。切替を出勤日基準にするのか、締め日をまたいだ翌クール全体に適用するのかを決めていなかっただけです。刻みの金額を先に議論しがちですが、事故るのはいつも「いつから適用するか」のほうです。

バック率の決め方

バック率に「相場」を求める店は多いですが、率そのものを他店の数字から借りても意味がありません。同じ「ドリンクバック500円」でも、ドリンク単価1,000円の店と2,000円の店では店に残る粗利がまるで違います。率は、店が残したい粗利から逆算して決めるものです。

たとえば店販のドリンクを1杯1,500円で出すとします(以下はすべて仮の数字)。原価が300円、キャストへのバックを500円に設定すれば、店に残るのは700円。この700円で家賃も人件費も賄えるか、という順で考えます。バックを700円に上げればキャストは喜びますが、店に残るのは500円になります。求人票に「ドリンクバック高め」と書けば体入は増えるかもしれませんが、粗利が薄れれば別のところで回収するしかなくなるでしょう。バック率は、求人市場で競合と見比べられる前提と、店に残す粗利の下限。この2つの間で決めます。相場表を写すのではなく、自店の1杯の内訳を書き出すところから始めます。

「引かれもの」が一番もめる

時給やバックは求人票に書いても、厚生費や送り代、ヘアメイク代などの控除条件は書かれないまま、入店後の給与明細で初めて分かることがあります。「聞いていた額と違う」という認識違いは、たいてい支給の低さより控除の後出しから生まれ、早期退店の引き金になりやすいものです。控除の可否は契約形態や個別事情で変わるため、専門家へ確認した内容を入店前に説明しましょう。

対策はシンプルで、控除項目を面接や体入の段階で先に開示することです。何が、いくら、どういう条件で引かれるのか。紙一枚にして渡しておけば、初回明細のショックはなくなります。後出しをやめるだけで、辞める理由がひとつ消えます。

なお、控除は「決めれば何でも引ける」ものではありません。賃金からの天引きには労働基準法上の制約があり、店の都合で一方的に差し引けない項目もあります。設計の前に、下記の点は押さえておきたいところです。

誰が計算しても同じ額になるまで書き切る

給与表の完成度は、項目の多さでは測れません。測る基準はひとつ。店長が休んでいても、代わりの誰かが同じデータから同じ支給額を出せるか、です。

破綻しがちな給与表には、口頭だけの例外が必ず混ざっています。「特別に同伴バックを上乗せする」「イベント月は別計算」——店長の頭の中にしかない例外は、その人がいない締め日に事故のもとになります。担当者によって計算結果が変わらないよう、例外も対象者・期間・承認者を記録に残しましょう。裁量をなくすのではなく、適用条件を再現できる形にするということです。

書き切れているかを確かめる手っ取り早い方法があります。店長以外のスタッフに、先月分を給与表とデータだけ渡して計算させてみます。同じ額が出れば合格。ズレたら、そのズレた項目こそが口伝で回していた部分です。多くの店で、指名バックの「本指名か場内か」の判定や、控除の条件でズレます。そこを言葉にして給与表へ書き足しましょう。この作業を一度通すだけで、締め日の属人化がかなり減ります。

どの売上を、どの期間で、どの率で計算するか。締め日までの具体的な段取りは時給・バック計算を締め日までに整理する手順にまとめました。ここまで書き切ったルールも、人力で回し続ける限り、締めのたびに全員の小計を確認し、段位を判定し、控除を突き合わせる時間が毎月かかりますし、新しい店長への引き継ぎも、その手順ごと渡すことになります。私たちは、その「たぶんこれで合ってる」とつぶやく締め日をなくすために、給与計算システムを作りました。書き切った給与表のルールを登録すれば、出勤・売上データから支給額を集計します。手計算の電卓を置くのは、給与表を書き切ったその先でいいでしょう。

よくある質問

給与体系はどのタイミングで見直せばいいですか?

決まった時期はありませんが、口頭だけの例外運用が増えてきた、担当者によって計算結果がずれる、といった兆しが見えたタイミングが目安です。給与表を書き直すより先に、既存項目を時給・バック・控除に仕分けて整理すると原因が見えやすくなります。

スライド制の時給はさかのぼって適用してもいいですか?

ルール次第で運用は可能ですが、さかのぼり適用と翌期間からの適用のどちらにするかを事前に明文化しておかないと、キャスト側と店側の認識がずれて揉め事の原因になります。適用日を率と同じくらい明確に決めておくことが重要です。

バック率は他店の相場に合わせるべきですか?

相場をそのまま写す必要はありません。同じバック額でもドリンク単価によって店に残る粗利は変わるため、自店の1杯・1本あたりの原価とバックの内訳を書き出し、残したい粗利から逆算して決めるほうが実態に合います。

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「たぶんこれで合ってる」で締めない

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画面も項目も、お店の運用に合わせて一から設計します。何をシステムにするか決まっていない段階のご相談も無料で承ります。

※ 画像は過去の開発例で、実際に開発する画面とは異なります。

実際に開発した画面の一例

画面は開発例です。項目・機能・デザインは、お店の運用に合わせて一から設計します。

使うとどう変わる?

時給・バック・控除を同じルールで計算し、本人へ根拠を示せる明細を作ります。

  1. 1店舗の給与ルールを登録
  2. 2勤怠・売上から支給額を計算
  3. 3明細を確認して締めを確定
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