「今月の原価率は◯%でした」。コンカフェでこの一行だけを渡されても、来月なにを直せばいいかは決まりません。分子に入っているものの性質が、バラバラだからです。
コンカフェの売上には、原価の振る舞いがまったく違う3つが混ざっています。仕込んだ量で原価が先に確定し、出なければ捨てるフード。未開封なら在庫として翌月へ持ち越せるドリンク。捨てはしないけれど現金が形を変えて棚に居座る物販グッズと、チェキのフィルム。この3つを足して売上で割った1つの数字は、平均としては正しくても、どこで利益が消えたのかを何も教えてくれません。
やることは単純で、区分を分けることです。分けたうえで、区分ごとに違う指標を見る。そこまで決めて初めて、棚卸しと発注が「やらされる作業」から「打ち手の材料」に変わります。
売上に混ざっている3つは、原価の性質が違う
フードは、原価が売れる前に確定する商品です。オムライスにケチャップで絵を描くにしても、コラボメニューのパフェにしても、材料は営業前に仕込みます。出れば売上になり、出なければ廃棄になる。つまりフードの原価は、客がどれだけ来たかではなく、店が何食分を用意すると決めたかで先に決まっています。ここが読み違えると、売上がよかった日でも利益は薄いという結果になります。
ドリンクは、いちばん素直な区分です。未開封のボトルや缶は在庫として残り、翌月へ持ち越せる。仕入れすぎても即座に損にはならず、遅れて回収されます。廃棄が出るのは割り物や生ものが中心で、量も読みやすい。売上原価の出し方や月次で比べる考え方はドリンク原価率の計算方法が先です。
物販グッズとチェキは、3つめの性質を持ちます。アクリルスタンドもキーホルダーもTシャツも、売れ残っても腐らないので「損をしていない」ように見える。しかし仕入れた時点で現金は出ていて、それが箱のまま棚に積まれている。原価率の計算では期末在庫として引かれるため、数字の上では原価に出てこないまま資金だけが寝ます。チェキはさらに別で、フィルムという1枚いくらの消耗品が確実に減っていく商品です。
この3つをまとめて1つの原価率にすると、フードの廃棄が増えた月と、次のイベント用にグッズをまとめて仕入れた月が、同じ「悪化した月」に見えます。前者は仕込み量の問題で翌日から直せる。後者はそもそも悪化ではなく、資金が在庫に変わっただけです。打ち手が正反対なのに、1つの数字では区別がつきません。
区分ごとに、見るべき指標が違う
分けたら、区分ごとに追う数字を決めます。全部を原価率で見ようとするから話が混ざるので、指標そのものを変えてしまうのが早い。
- フードは、廃棄の数と仕込み量。何食分を仕込んで、何食出て、何食捨てたか。原価率より先にこの3つを数える
- ドリンクは、棚卸し差異。記録上あるはずの数と、実際に棚にある数の差。差が出るなら、どこかで記録の外に出ている
- 物販グッズは、イベント単位の消化率と滞留期間。何個仕入れて何個売れたか、売れ残りが何日棚にあるか
- チェキは、フィルムの消費枚数と販売枚数の差。撮ったのに売上に乗っていない枚数がここに出る
フードの廃棄は、率で見るより数で見たほうが現場が動きます。「廃棄率が上がりました」では誰も何もできませんが、「昨日のパフェは10食仕込んで4食捨てた」なら、今日は6食にしようという判断が即座に出ます。曜日や時間帯で出方が違うなら、仕込み量も曜日で変えます。どの曜日が薄いかを数字で把握する話は暇な曜日・時間帯の売上分析で扱っています。
物販の消化率は、次の仕入れ判断に直結します。前回のイベントで50個作って20個しか出なかったなら、次は30個にする。この当たり前が回っていない店が多いのは、イベントが終わった瞬間に売れ残りが「その他の在庫」に吸収されて、何個作って何個出たかが後から追えなくなるからです。イベントごとに仕入数と販売数を対にして残しておけば、判断材料は勝手にたまります。
チェキのフィルム枚数は、原価管理であると同時に給与の話でもあります。販売したチェキの枚数はバックの計算根拠になり、フィルムの消費枚数は原価になる。この2つがずれているなら、サービスで撮った分やSNS用に撮った分がそこにあるということです。バックの設計そのものはコンカフェの給与計算で整理しています。
コンセプトが変われば、管理する対象ごと入れ替わる
一般的な飲食店の在庫管理は、同じ商品を長く売り続ける前提で組まれています。コンカフェはここが違う。季節イベント、周年、コラボ、キャストの生誕。そのたびに限定メニューと限定グッズが立ち上がり、終われば消えます。管理する対象そのものが数週間単位で入れ替わるのが、この業態の特徴です。
だから、イベントを始める前に決めておくことが3つあります。何を何個用意するか。売れ残ったらどうするか。いつ判断するか。3つめが抜けがちで、「様子を見て」と言っているうちにイベントが終わり、余った在庫が段ボールのまま倉庫に入ります。イベント終了から何日以内に扱いを決める、と先に決めておくだけで、この滞留はかなり減ります。
売れ残りの扱いは、期限のあるものとないもので分けます。フード食材は期限が判断を強制してくれるので、通常メニューへ転用するか廃棄するかの二択です。厄介なのはグッズで、腐らないぶん判断を先送りできてしまう。次のイベントで再販する、通年商品として定価で置き続ける、価格を下げて出しきる、処分する。どれを選ぶにしても、選んだことを記録しないと、次に棚を開けたときに「これは何のときのやつだったか」が誰にも分かりません。
実務的には、在庫にイベント名を付けて管理するのがいちばん簡単です。どのイベントで仕入れた何が、いま何個残っているか。これが引ける状態なら、イベントの振り返りも、倉庫の整理も、次の発注数の決定も、同じ台帳の上で済みます。コンカフェ全体の運用課題の整理はコンカフェの店舗運営にまとめています。
棚卸しを、いつ・誰が・どの単位でやるか
棚卸しは、やるかやらないかより、いつ誰がどの単位でやるかで精度が決まります。まず時間帯。営業後にやると数字が荒れます。閉店作業の後に疲れた状態で数えれば、早く帰りたい力学が働きますし、そもそも片付けが終わっていない棚を数えることになる。開店前に、その日の準備の一部として数えるほうが安定します。
次に単位です。「焼酎 3」と書かれたメモは、3本なのか3杯なのか分かりません。フードの食材が「1」と書いてあれば、1袋か1kgか1食分か。単位を決めずに数え始めると、担当が変わった瞬間に前月と比較できない数字が生まれます。品目ごとに数える単位を先に固定し、在庫表にその単位を印字しておく。これだけで、引き継ぎのたびに起きるズレの大半は消えます。
担当については、毎回同じ人にするより、誰がやっても同じ結果になる手順を作るほうが実務的です。棚の並び順と在庫表の並び順をそろえる、開封済みの残量をどう数えるかを決める(3分の1刻みでよい、といった粒度で構いません)、数えにくいものは写真の見本を用意する。人が入れ替わる前提の業態なので、属人的な精度に頼ると入れ替わるたびに数字が飛びます。ボトルを預かっている店なら、キープ分の数え方はボトルキープ管理のルール設計もあわせて見てください。
全品目を毎月きっちり数えるのがきついなら、頻度を分けます。動きの速いドリンクとフィルムは週次、動きの遅いグッズや備品は月次。全部を同じ頻度で数えなければならない理由は、もともとありません。
発注の属人化と、発注点の決め方
「あの人がいないと発注できない」は、どの店でも起きます。ただコンカフェはイベントごとに商品が変わるぶん、頭の中にある適正量の情報量が多く、余計に引き継ぎにくい。店長が休んだ週にフィルムを切らす、あるいは不安になって倍量を頼む。どちらも起きます。
属人化を解くのに必要なのは、勘の共有ではなく発注点の明文化です。品目ごとに、最低これだけは切らさないという最低在庫と、ここを下回ったら発注するという発注点を数字で決める。発注点のおおまかな考え方は、1日あたりの平均消費量に、注文してから届くまでの日数を掛けて余裕分を足す形です。厳密さより、書いてあることのほうが効きます。
コンカフェ特有の注意は、平均が当てにならない日があることです。イベント日と通常営業日で、フィルムもドリンクもフードも消費量が跳ねます。平日の平均だけで発注点を作ると、イベント当日に切らす。イベントが決まった時点で、その分を上乗せした発注をかける手順を別に持っておくのが現実的です。
あわせて、発注の履歴を残します。誰がいつ何をいくつ、どこに頼んだか。属人化の正体は「その人しか知らない」ではなく「その人しか記録していない」ことなので、履歴が残っていれば、次の担当は過去の発注量をなぞるところから始められます。前回のイベントで何をいくつ頼んだかが見えるだけで、判断の質がかなり変わります。
売上にならない消費を、記録の外に置かない
原価管理でいちばん見落とされるのが、売上に乗らないまま出ていく分です。コンカフェにはこれが多い。キャストドリンク、新メニューの試作、まかない、SNSに載せるための撮影用の一皿、イベントの景品、サービスで撮ったチェキ。どれも原価は確実に発生していて、売上には一切乗りません。
これらを記録していないと、全部が棚卸し差異として現れます。そして差異は、数え間違いなのか、試作に使ったのか、持ち出されたのかの区別がつきません。区別がつかない差異は、結局「よく分からないけど合わない」として放置されます。記録の目的は犯人探しではなく、差異を分類できる状態にすることです。原因が分類できれば、対処の要否も判断できます。
記録の粒度は重くしないほうが続きます。品目と数量と用途(試作・まかない・サービス・撮影)だけを1行残す。用途を選択肢にしておけば、書く側の負担はほとんどありません。これが1か月たまると、新メニュー開発に材料をどれだけ使っているかが初めて数字で見えます。
キャストドリンクについては、バックの対象になっている店であれば給与計算の記録とも重なります。同じ1杯が、原価としては在庫を減らし、給与としてはバックを発生させる。この2つを別々の紙に書いていると、突き合わせのたびに手作業が発生します。区分ごとの在庫、イベント単位の消化、売上にならない消費、発注の履歴。これらを手作業で回すと、月末にノートと伝票と発注メモを机に並べる時間が毎月かかり、担当が変わればその手順ごと引き継ぐことになります。その集計を引き受けるために、私たちは在庫管理システムをお店ごとに作っています。いまの数え方や発注のどこが重いか、相談だけでも構いません。
よくある質問
コンカフェの原価率は何%が適正ですか?
全店舗に当てはまる一律の目安はありません。フード中心の店とドリンク中心の店、物販の比率が高い店ではそもそも構成が違うため、他店の数字と比べてもほとんど意味がありません。フード・ドリンク・物販を分けて自店の原価を出し、同じ費目・同じ期間で前月や前年同月と比較して悪化していないかを見るほうが実用的です。
フード・ドリンク・物販を分けて原価を見る必要はありますか?
分けたほうが打ち手が決まります。フードは仕込み量で原価が先に確定し出なければ廃棄になる、ドリンクは未開封なら在庫として翌月へ持ち越せる、物販は売れ残っても腐らない代わりに現金が在庫として滞留する、というように原価の振る舞いが違います。まとめて1つの原価率にすると、フードの廃棄が増えた月とグッズをまとめて仕入れた月が同じ悪化に見えてしまい、正反対の対処が必要な状況を区別できません。
コンカフェの棚卸しはいつやるのがいいですか?
営業後より開店前が安定します。閉店作業の後は疲労もあり、片付けが終わっていない棚を数えることになるため、精度が落ちやすいからです。あわせて品目ごとに数える単位(本・杯・袋・枚など)を先に固定し、在庫表に印字しておくと、担当が変わっても前月と比較できる数字が残ります。動きの速い品目は週次、動きの遅い品目は月次と、頻度を分けても構いません。
イベントで売れ残ったグッズはどう扱えばいいですか?
イベントを始める前に、売れ残ったときの扱いといつ判断するかを決めておくのが実務的です。次のイベントで再販する、通年商品として定価で置き続ける、価格を下げて出しきる、処分する、といった選択肢のどれを取るにしても、選んだ結果を記録しないと次に棚を開けたときに何のときの在庫か分からなくなります。在庫にイベント名を付けて管理しておくと、消化率の振り返りと次回の発注数の判断が同じ台帳の上で済みます。
キャストの試作やまかないも記録に残すべきですか?
残したほうが差異の原因を分類できます。試作・まかない・サービス・撮影用といった売上に乗らない消費を記録していないと、すべてが棚卸し差異としてまとめて現れ、数え間違いなのか持ち出しなのか区別がつきません。品目と数量と用途を1行残すだけで十分で、たまってくると新メニュー開発にかかっているコストも見えるようになります。
発注を店長一人がやっていて、休むと在庫が回りません。どうすればいいですか?
品目ごとに最低在庫と発注点を数字で決めて書き出し、発注の履歴を残すことです。発注点は1日あたりの平均消費量に届くまでの日数を掛けて余裕分を足す形が基本ですが、コンカフェはイベント日に消費が跳ねるため、平常時の平均だけで組むと当日に切らします。イベントが決まった時点で上乗せ発注をかける手順を別に持っておくと安全です。
この記事の課題を、システムで解決するなら
1つの原価率に丸めず、区分ごとに見分ける
お店専用の在庫管理システムなら、フード・ドリンク・物販グッズ・フィルムを区分ごとに記録し、廃棄の数、棚卸し差異、イベント単位の消化率を分けて確認できます。最低在庫と発注点、発注履歴も店の側に残るので、担当が休んでも発注が止まりません。相談は無料で、導入前提でなくても大丈夫です。
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画面は開発例です。項目・機能・デザインは、お店の運用に合わせて一から設計します。
在庫数と発注状況を同じ画面で共有し、欠品・発注漏れ・重複発注を減らします。
- 1スマホで棚卸し数を入力
- 2最低在庫から発注候補を判定
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