「報酬30万円だから、30万円×10.21%で30,630円っすね」。締め日にそう即答した経理担当は、計算式の一手間を飛ばしています。正しい源泉徴収額は、もっと少なくなります。
ホステスやコンパニオンへの支払いが「報酬」にあたる場合、源泉徴収額は、同一人へ1回に支払う報酬額から「5,000円×計算期間の日数」を差し引いた残額に10.21%を掛けて計算します。給与にあたる場合はこの式ではなく、給与の源泉徴収税額表を使います。
日払いのたびに報酬額へそのまま10.21%を掛ける運用も同じ間違いで、5,000円×日数の控除が抜け落ちます。まず基本式の中身から、日払いで間違えやすい理由、給与と報酬の見分け方まで、順に確認していきましょう。
ホステス報酬の源泉徴収の基本式
キャストへの支払いが「報酬」にあたる場合、つまり雇用契約による給与ではない場合、源泉徴収の額はこう計算します。
源泉徴収額 =(報酬額 − 5,000円 × 計算期間の日数)× 10.21%
肝は、報酬額にそのまま税率を掛けるのではなく、先に「5,000円 × 日数」を差し引くところです。これは国税庁のタックスアンサー No.2807(ホステス等に支払う報酬・料金等の源泉徴収)に示された計算方法で、10.21%という税率には復興特別所得税が含まれています。冒頭の30万円の例で「30,630円」と答えた人は、この控除の一手間を飛ばしています。
「計算期間の日数」の罠
間違いがいちばん多いのが、式の中の「計算期間の日数」です。ここを出勤日数だと思い込むと、税額がずれます。
ここでいう日数は、出勤した日の数ではありません。報酬計算の基礎となった期間の全日数、つまり暦の上での日数です。月払いで3月分の報酬をまとめて払うなら、3月は31日あるので日数は31日。その月に何日出勤したかは関係ありません。
具体的に計算します。計算期間が3月1日から31日までの31日間、この期間の報酬が75万円だったとします。控除額は 5,000円 × 31日 = 155,000円。これを報酬から引くと 750,000 − 155,000 = 595,000円。ここに10.21%を掛けて、源泉徴収額は 595,000 × 10.21% = 60,749円になります。
もしこの日数を、たとえば出勤した12日で計算してしまうと、控除額は 5,000円 × 12日 = 60,000円にしかならず、差し引く前の金額が大きくなって、源泉として引く額が増えます。つまり控除の日数を出勤日数で数えると、キャストから引きすぎることになる。引かれすぎたキャストは手取りが減るので、これはそのままクレームの火種です。
日払いだとなぜ間違えるか
ここまでは月払いの話でしたが、日払いを混ぜると計算がさらにややこしくなります。
日払いのたびに「その日の報酬 × 10.21%」で引くと、国税庁が示す「5,000円 × 計算期間の日数」の控除が抜けます。一方、計算期間は単純に出勤日数や支払回数へ置き換えられません。報酬の計算基礎となる期間と支払方法に応じて確認し、複数回に分けて支払う場合を含め、具体的な処理は税理士または所轄の税務署へ確認してください。
具体的な処理を確認する前提になるのが、日単位の支払記録です。いつ・いくら支払い、その金額が税引前か税引後かが曖昧だと、報酬額と計算期間を確認できません。担当者ごとのメモに分けず、支払日・対象期間・支払額・源泉徴収額を同じ基準で記録します。
だから私たちは、日払いの受け渡しから月次の集計までを記録に残せる日払い管理システムを作っています。源泉の整合を取る土台になるのは、いつ・いくら渡したかの正確な支払記録だからです。
そもそも「給与」なら計算が全く違う
ここまでの10.21%の式は、支払いが「報酬」であることが前提です。もしキャストとの契約が雇用契約で、支払いが給与所得にあたるなら、この式は使いません。
給与の場合は、源泉徴収税額表にあてはめて税額を求めます。「5,000円 × 日数」を引くこの計算式は給与には適用されないので、報酬のつもりで給与を計算したり、その逆をしたりすると、税額の考え方そのものが違ってきます。同じ「日払いのキャストから源泉を引く」でも、報酬か給与かで使う計算方法が入れ替わるわけです。ここを取り違えたまま何か月も運用すると、後からまとめて訂正する手間が生まれます。
やっかいなのは、報酬か給与かを店が都合で選べるわけではない点です。業務委託の形をとっていても、シフトで管理し時給で払っているような実態があれば、給与として扱うべきと判断されることがある。契約形態の考え方はキャストは雇用か業務委託かで整理しています。源泉の計算方法を決める前に、まず自店の支払いがどちらなのかを確かめる必要があります。
源泉を引かない・引きすぎる、どちらも問題
源泉徴収は、引かなくても引きすぎても、それぞれ別の問題を店に残します。
引かない場合、源泉徴収は支払う側である店の義務なので、本来納めるべき税を納めていない状態になります。後から本税に加えて不納付加算税などがかかるリスクがあり、金額がまとまってくると店の負担は小さくありません。
逆に引きすぎる場合、税務上の問題というよりキャストとの信頼問題です。前の見出しで見たように、日数の数え方ひとつで引きすぎは起きる。手取りが本来より減っていれば、キャストは敏感に気づきます。給与明細を見た子から「先月より売ったのに、なんで手取りが減ってるんですか」と詰められて、店側が計算の根拠を説明できない。この一場面が、積み上げてきた信頼を崩します。しかも一度引きすぎた分の説明と返金を迫られると、店の事務負担もそのまま増えます。
源泉徴収は、計算式を一度覚えれば終わりではなく、報酬か給与かの判断、計算期間の日数、日払いとの整合まで含めて運用する必要があります。支払調書の作成や納付の実務、自店の個別の判断については、税理士に確認しながら進めるのが確実です。
よくある質問
5,000円の控除はどんなときに使えますか?
支払いが「報酬」にあたる場合に、同一人への1回の支払いごとに「5,000円×計算期間の日数」を差し引ける。支払いが「給与」にあたる場合はこの控除を使わず、源泉徴収税額表で計算するため、まず報酬か給与かを確認する必要がある。
確定申告は誰がする必要がありますか?
源泉徴収された報酬を受け取ったキャスト本人が、原則として確定申告で税額を精算する。店側は源泉徴収と支払調書の準備を行う立場で、申告の要否や具体的な手続きは税理士または所轄の税務署に確認してほしい。
他店と掛け持ちしている場合、控除は店ごとに使えますか?
5,000円×日数の控除は、支払う店ごと・1回の支払いごとに計算されるもので、掛け持ち先の合算などを店側で判断するのは難しい。正確な扱いは税理士または所轄の税務署に確認するのが確実だ。
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