飲食店の原価率はおよそ30%と言われます。ではキャバクラは何%か。同じ物差しで測ろうとすると、たいてい話がずれます。売っているのが酒そのものではなく、時間と接客だからです。
キャバクラのドリンク原価率に、全店舗へ当てはまる一つの目安はありません。まず「売上原価÷対象売上×100」で自店の原価率を計算し、同じ費目・同じ期間で前月や前年同月と比較するのが実務的です。原価がかかるのは酒・割り物・氷・フードくらいで、セット料金や指名料には仕入原価がほぼないため、飲食店より大幅に低く出るのが前提になります。
売上原価は「期首在庫+期間中の仕入−期末在庫」で求めます。原価率が上がったときに仕入価格・値付け・廃棄・サービス提供・棚卸し差異のどこを疑えばいいか、計算方法から順番に見ていきましょう。
原価率はなぜ低いか
キャバクラの売上は、セット料金、指名料、キャストドリンク、ボトルで構成されます。このうち原価がかかるのは酒・割り物・氷・フードくらいで、セット料金や指名料には仕入原価がほぼありません。売上の中心が「場所と時間と接客」に付く料金だから、原価率は一般の飲食店より大幅に低く出ます。
どのくらい低いかは店によりますが、10〜20%程度に収まる店が多いようです。価格帯の高い店やシャンパンが動く店ではさらに下がることもあり、逆に低価格帯で酒の提供量が多い店では上がります。あくまで幅の話で、業態と価格設定で変わる前提で見てください。
問題は、原価率が低いこと自体が管理しない言い訳になりやすい点です。「どんぶり勘定でも黒字だから」と放置しがちですが、キャバクラは人件費率が高い業態です。原価が数ポイントぶれれば、薄くない利益がそのまま削れます。原価率が低い店ほど、そのブレに気づける体制があるかどうかで差が出ます。
キャストの時給とバック、黒服やドライバーの人件費は、売上が立つ前に固定費として先に乗ります。原価率が5ポイント動いても酒代の話に見えて小さく感じますが、月の売上が数百万円あれば、金額では十数万円単位の差になります。人件費で削れない分、原価のブレはそのまま手残りに効きます。
計算方法
原価率の基本式は、売上原価 ÷ 売上高です。ここでつまずきやすいのが「売上原価」で、これは仕入額そのものではありません。その月に実際に出た酒の分だけを指します。
売上原価は、期首在庫 + 仕入 − 期末在庫、で出します。月初にあった在庫に今月仕入れた分を足し、月末に残った在庫を引く。残っている酒は原価に含めない、という考え方です。この式を見れば分かるとおり、棚卸しをしていないと期末在庫が出ず、原価率は計算できません。仕入額をそのまま原価とみなすと、在庫が積み上がった月は原価率が跳ね上がって見えます。
仮に、期首在庫30万円、当月仕入80万円、期末在庫40万円だったとします。この仮定では売上原価は30+80−40=70万円。売上が450万円なら原価率は約15.6%です。数字は説明のための仮定なので、実際の値はご自身の店の帳簿で計算してください。セット、ボトル、キャストドリンクに分けて出すと、どこで原価が膨らんでいるかまで見えます。
品目別の考え方
原価率は店全体の平均で見るだけでは足りません。品目によって性質がまったく違うからです。
ハウスボトルの焼酎やウイスキーは、割って何杯も出せるので原価率が低い。キャストドリンクは、原価の安いカクテルやソフトドリンクが多く、単価に対して原価はごくわずかです。フードや乾き物は、頼まれる量が読めず、廃棄が出れば原価率を押し上げます。そしてシャンパンは、他と毛色が違います。
シャンパンは仕入値が高く、原価率だけ見れば高い品目です。しかし1本で動く粗利の額が大きい。原価率20%のハウスボトルより、原価率が高くても1本で数万円の粗利が残るシャンパンのほうが、店に落ちる金額は大きくなります。ここで率と額を混同しないこと。「原価率が高いから売りたくない」は、粗利額を見れば逆になることがあります。率で管理する品目と、額で見る品目を分けて考えます。
フードや乾き物は、原価率そのものより読めなさが厄介です。お通しやサービスの盛り合わせは、出た数と仕入が対応しにくく、余れば廃棄になります。売上に乗らないまま原価だけが出ていく品目なので、ドリンクと同じ棚で平均に混ぜず、別に見ておいたほうが実態がつかめます。
悪化する典型パターン
原価率がじわじわ悪くなる店には、決まった原因があります。多くは会計に乗らない酒です。
割り物の期限切れやフードロスといった廃棄。開けたけれど出しきれなかったボトル。キャストやスタッフの内飲み・試飲が過剰になっているケース。サービスで出したドリンクが会計に記録されず、原価だけ発生している状態。数え間違いや、裏口からの持ち出し。どれも売上には一切乗らず、仕入と在庫の差としてだけ現れます。
これらは1件ずつ見れば小さく、その場では気づけません。効くのは、月次で「先月より2ポイント悪い」と気づける体制です。原価率が15%前後で安定していた店が、ある月だけ18%になった。この変化を拾えれば、廃棄が増えたのか、サービス分が膨らんだのか、原因を探しにいけます。数字を毎月出していない店は、この2ポイントに一生気づけません。
たとえば売上450万円の店なら、原価率3ポイントの悪化はおよそ13万円です。1本の廃棄や1杯のサービスでは目に見えなくても、月末に集計して数字にすると、それだけの金額が売上に乗らずに消えていたことが分かります。犯人探しをするためではなく、翌月の運用を1つ直すための材料として使います。
月次で見る仕組み
原価率を毎月出すのに、特別な道具は要りません。必要なのは、棚卸しの数字と仕入の記録が毎月そろうこと。この2つがあれば、期首在庫+仕入−期末在庫で売上原価が出て、売上で割れば原価率が出ます。
逆に言えば、棚卸しをやっていない店は、この計算の入り口に立てません。まず月末に在庫を数える運用を作るのが先です。数え方の手順は酒・備品を棚卸しして発注につなげる手順で解説しています。ボトルの銘柄や残量まで含めて数えるなら、ボトルキープ管理のルール設計もあわせて見てください。
棚卸しと仕入がデータで残れば、原価率は毎月ほぼ自動で出せる数字になります。これを手集計で続けると、月末ごとに在庫表と仕入伝票を突き合わせて電卓を叩き直す時間がかかり、担当が変わればその手順ごと引き継ぐことになります。その毎月の集計を引き受けるために、私たちは在庫管理システムを作っています。在庫と仕入を記録しておけば、月次の原価率を同じ条件で並べて、先月との差を追えます。いまの原価率の出し方が毎月しんどいなら、相談だけでも構いません。
よくある質問
原価率は何%を目指せばいいですか?
全店舗に当てはまる一律の目安はありません。キャバクラは原価率10〜20%程度に収まる店が多いとされますが、価格帯や酒の提供量によって変わるため、自店の過去の数値と比較して悪化していないかを見るほうが実用的です。
棚卸しをしないと原価率は分かりませんか?
分かりません。売上原価は「期首在庫+仕入−期末在庫」で求めるため、期末在庫を数える棚卸しをしていないと計算の入り口に立てません。仕入額をそのまま原価とみなすと、在庫が積み上がった月は実態より高く出ます。
シャンパンは原価率が高いので出さないほうがいいですか?
率だけで判断すると誤ります。原価率が高くても1本あたりの粗利額が大きいシャンパンは、店に残る金額で見ればハウスボトルより有利なことがあります。品目ごとに率で見るか額で見るかを分けて判断してください。
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