深夜0時を過ぎても酒を出しているガールズバーやコンカフェは、ほとんどが「深夜酒類提供飲食店営業」の届出で営業しています。許可ではなく届出。この違いは書類の手間の差ではなく、その店で何ができるかを決める分岐点です。

届出を選んだ時点で、深夜0時以降も営業できることと、接待ができないことが同時に決まります。接待をしたければ風俗営業1号の許可を取ることになりますが、許可を受けた店は原則として深夜0時以降の営業ができません。「深夜も開けて、接待もする」という形は制度として用意されていません。

そして届出は、出したら終わりの手続きではありません。問題になるのは提出したときではなく、届出の内容と店の実態が食い違った時点です。この記事では、届出営業の店が営業を続けるあいだ何を守り続ける必要があるのかを整理し、それを日々の開閉店点検に落とす方法まで書きます。

届出と許可の違いは、接待と営業時間を同時に決める

まず用語を整理します。深夜0時以降に酒類を提供して飲食店を営むには、深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要です。これは営業所の所在地を管轄する警察署を経由して提出する届出で、審査を経て与えられる許可とは性質が違います。一方、接待をともなう飲食店営業は風俗営業1号にあたり、こちらは許可です。

ここで見落とされやすいのが、この二つが「同じ店で両方取る」ものではないという点です。届出で営業している店は接待ができません。許可を受けた店は接待ができますが、原則として深夜0時以降は営業できません。つまり店の設計として、深夜帯の売上を取るのか、接待にあたる接客を取るのか、どちらかを最初に選ぶことになります。営業時間そのもののルールはキャバクラの営業時間は何時まで?原則0時・例外1時で整理していますが、時間と接待は別々の論点ではなく、選んだ営業形態で同時に決まる関係にあります。

「届出」という言葉の軽さが誤解を生みます。書類を出せば始められる、という手続きの軽さは事実です。ただ軽いのは入口だけで、営業を続けるあいだに守る義務の重さは別の話です。届出で営業している店が接待をしていれば、それは無許可営業の話になります。手続きが簡単だったことは、その後の免罪符になりません。

接待の線引きそのものはガールズバーの接待はどこからかに詳しく書いています。要点だけ言えば、特定少数の客を相手にしているか、その客の近くに留まっているか、それが継続しているか。この3つがそろえばカウンター越しでも接待に当たりえます。カウンターがあるかどうかは判断基準に入っていません。

届出は出して終わりではない。ずれた時点で問題になる

届出書には、営業所の所在地、営業時間、そして営業所の構造や設備を示す図面が添えられています。つまり届出とは「こういう店を、この時間に、この形でやります」という宣言です。だから、その宣言と実際の店が食い違えば、届け出た内容と違う店を営業していることになります。

実際にずれるのは、たいてい次のような場面です。

  • 構造の変更。カウンターを削ってボックス席を足した、間仕切りやパーティションを立てた、個室に近い区画を作った
  • 営業時間の変更。届け出た時間より早く開ける、遅くまで開ける、曜日によって変える
  • 接客の実態の変化。書類上は接待をしない店のまま、現場だけが接待に寄っていく
  • 営業者の変更。個人から法人にした、代表者が変わった、店名を変えた、経営を人に任せた

このうち経営者がいちばん軽く見がちなのが内装です。「席を二つ足しただけ」「ソファの向きを変えただけ」という感覚でも、図面と現物が合わなくなれば説明できません。立入があったときに照合されるのは、届出書の記載と、いま目の前にある店だからです。改装の予定が出た時点で管轄の警察署に相談する、という手順を店のルールにしておくのが確実です。

営業者の変更も同じで、実際の経営が別の人に移っているのに届出上の名義が元のままという店は珍しくありません。日々の売上には何の影響もないので、誰も直そうとしない。問題が表に出るのは、いつも立入や指導のときです。

届出営業でも守り続ける必要があること

届出で営業していても、営業中ずっと守る必要がある義務があります。「許可店だけの話だろう」と思われているものが、届出店にもかかっている点が重要です。

ひとつめは、接待をしないこと。これは前述のとおりで、届出営業の前提そのものです。

ふたつめは、年少者の就業制限です。酒類を提供する店では、18歳未満の者を22時以降に客に接する業務へ就かせることができません。コンカフェのように高校生年齢の応募が来やすい業態では、採用の段階だけでなくシフトを組む段階でも効いてきます。18歳の誕生日前後で扱いが変わるため、在籍名簿の生年月日が正確でなければ判定できません。

みっつめは、従業者名簿の備付けです。従業者名簿は風俗営業の許可店だけの義務ではなく、深夜酒類提供飲食店営業の届出店にも必要です。ここを知らずに「うちは届出だから名簿はいらない」と考えている店が実際にあります。備付けや記載の義務に違反した場合の罰金は100万円以下で、2025年の改正風営法により従来の50万円以下から引き上げられました。国籍等の確認義務に違反した場合も同じ条文の対象です。名簿に何を書き、いつ書き、いつまで残すかはガールズバー・コンカフェに従業者名簿は必要?で整理しています。

よっつめは、店内の表示です。料金の表示、18歳未満の立入禁止の表示など、店内に掲げておく必要があるものがあります。掲示物は一度貼れば終わりに見えて、実際にはメニュー改定で料金表と実料金がずれたり、貼り替えのときに剥がしたまま戻し忘れたりします。掲示物の種類はキャバクラの店内掲示物まとめにまとめました。

この4つに共通しているのは、開業時に一度そろえて終わるものではない、という性質です。人が入れ替わればもう名簿は古くなり、メニューを変えれば料金表がずれ、シフトを組み直せば年齢の判定をやり直すことになります。届出営業の義務は、日々の運用の側にあります。

開業のときだけ専門家に頼み、その後は誰も見ていない

この業態でいちばん危ないのは、無知の状態ではありません。「開業のときはきちんとやった」という状態です。

開業時には行政書士に依頼して、図面を引き、書類をそろえ、警察署へ提出するところまで丁寧にやります。そこは問題ありません。問題はその後です。半年経つと体験入店が増えて名簿の記載が追いつかなくなる。一年経つと内装に手を入れる。二年経つと店長が代わり、新しい店長は届出書を一度も読んだことがない。誰も悪意を持っていないのに、書類と実態の距離だけが静かに開いていきます。

そして、いきなり摘発されるわけではありません。2026年5月、警視庁が都内のガールズバー・コンカフェ4店舗を無許可営業の疑いで一斉に摘発しました。この事案で報じられているのは、2024年12月以降、複数回にわたって行政指導を受けていたにもかかわらず改善しなかった、という経緯です。つまり指導が先に来ています。分かれ目は、指導を受けた店が運用を直せたかどうかでした。

直せない理由も、たいていは意思の問題ではありません。指導の内容を毎日の作業に組み込む工程が抜けているだけです。朝礼で「気をつけて」と言えばその週は変わりますが、忙しい金曜が二回来れば元に戻ります。

罰則の水準も2025年の改正で変わりました。無許可営業には5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金が科されうる水準です。「見つかっても大したことにはならない」という改正前の感覚のままなら、前提が変わっています。指導を受けた段階で本気で直す価値は、以前より格段に大きくなりました。

営業中に見るべきことを開閉店の点検項目に落とす

ここからが実務です。届出営業で守るべきことを、開店前・営業中・閉店後の点検項目に分けて書き出します。ポイントは、判断を求める項目にしないことです。「接待をしていないか」ではなく「同じお客様の前に留まり続けているキャストがいないか」。忙しい時間帯に法律用語で考えられる人はいません。動作で書きます。

開店前に見るものは、店の状態です。

  • 料金表が掲示されていて、いまのメニュー・いまの料金と一致しているか
  • 18歳未満立入禁止の表示が、剥がれたり隠れたりしていないか
  • 届出に関する書類が定めた場所にあるか
  • 本日出勤するキャストのうち、名簿の記載が未完了の人がいないか

営業中に見るものは、人の動きです。

  • 22時をまたぐ時点で、18歳未満の在籍者が客に接する持ち場に入っていないか
  • 特定のお客様の前に留まり続けているキャストがいないか
  • 客席に座っている、一緒に歌っている、身体に触れているといった行為が起きていないか
  • 届け出た営業時間の範囲で開け閉めしているか

閉店後に見るものは、記録です。その日入った体験入店者や新人の名簿記載が終わっているか、本人確認の書類を確認した記録が残っているか、翌日へ引き継ぐことがないか。ここを閉店作業に入れておかないと、名簿は必ず後回しになります。

もうひとつ、頻度を分けておくと運用が軽くなります。毎日見る項目は上のとおりですが、内装の変更、営業時間の変更、営業者や店名の変更は、毎日見ても意味がありません。これらは「変更が起きたときに走らせる点検」として別に持ちます。改装の計画が出たら、席を動かしたら、店長が代わったら。この3つのタイミングで届出内容との突き合わせをする、と決めておけば足ります。

担当・記録・写真・申し送りをどう残すか

点検項目を作っただけでは、二ヶ月で形だけになります。実態を動かすには、確認したことが記録に残る形にする必要があります。残すのは4つです。

ひとつめは担当と時刻。誰がいつ確認したかが分かる形にします。チェック欄に印を付けるだけの紙は、後からまとめて付けられてしまいます。名前と時刻が残るだけで、確認は実際の作業になります。

ふたつめは写真です。掲示物、料金表、店内の状態は文字で書くより写真のほうが速く、そして正確です。改装の前後を撮っておけば、届出内容と照らすときの材料にもなります。「料金表を確認した」というチェックと、その日の料金表の写真とでは、後から見たときの意味がまったく違います。

みっつめは異常の扱いです。点検で見つかったことのうち、その場で直せるものは直して終わり、直せないものは申し送りに回す。この分岐を決めておかないと、見つけたのに誰も直さないという状態が生まれます。掲示物が破れている、備品が壊れている、名簿の記載が一人分足りない。次の日の担当者が最初に見る場所に、これらが集まるようにします。

よっつめは履歴です。日々の点検結果が日付順に残っていることが、指導や立入を受けたときに効きます。「毎日確認しています」という口頭の説明と、日付と担当者つきの記録を出せる状態とでは、話の重みが違います。改善を求められたあとに何をどう変えたかも、記録があれば示せます。

そして、この記録は店長が代わったときにいちばん効きます。前任者の頭の中にしかなかった「うちの店で気をつけること」が、項目と履歴の形で残っているからです。届出書を読んだことがない新しい店長でも、点検項目をなぞれば何を守る店なのかが分かります。ガールズバーの運営全般で押さえるべき論点はガールズバーの店舗運営にまとめています。

この一連の作業を紙で回すと、項目の印刷、記入、保管、担当者への周知、抜けた日の追跡が全部手作業になります。私たちは、この点検と記録と申し送りをひとまとめに扱う開閉店点検システムをお店ごとに作っています。項目も画面も、その店が届出で営業しているのか許可で営業しているのかに合わせて設計できます。

よくある質問

深夜酒類提供飲食店営業の届出は誰がやりますか?

営業する本人(個人事業主または法人)が、営業所の所在地を管轄する警察署を経由して提出します。実務では図面の作成や書類の準備を行政書士に依頼する店が多いですが、届け出た内容を守る義務は営業者本人にあります。開業時に代行を頼んだ場合でも、届出書に何が書かれているかは経営者と店長が把握しておく必要があります。

ガールズバーは届出だけで開業できますか?

接待をせず、深夜0時以降に酒類を提供する形であれば、深夜酒類提供飲食店営業の届出で営業できます。ただし飲食店としての営業許可は別途必要で、届出はそれに加わるものです。接待をともなう営業をしたい場合は風俗営業1号の許可が必要になり、その場合は原則として深夜0時以降の営業ができません。

コンカフェも深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要ですか?

深夜0時以降に酒類を提供するのであれば必要です。逆に、酒類を出さない、あるいは0時前に閉めるのであればこの届出の対象にはなりません。ただし酒類を提供する店では、18歳未満の者を22時以降に客へ接する業務に就かせることができないため、営業形態を決める段階で在籍者の年齢構成もあわせて考える必要があります。

届出で営業している店にも従業者名簿は必要ですか?

必要です。従業者名簿の備付けは風俗営業の許可店だけの義務ではなく、深夜酒類提供飲食店営業の届出店にもかかります。備付けや記載の義務に違反した場合の罰金は100万円以下で、2025年の改正風営法により従来の50万円以下から引き上げられました。国籍等の確認義務に違反した場合も同じ条文の対象です。

店の内装を変えたら届出はやり直しになりますか?

届出書には営業所の構造や設備を示す図面が添えられているため、その内容と実態がずれれば、届け出た内容と異なる店を営業している状態になります。どこまでの変更で手続きが必要になるかは変更の内容によって変わるため、席の配置や間仕切りを触る計画が出た段階で、管轄の警察署に相談してから着工するのが確実です。

立入があったとき、何を見られますか?

届出書の記載と実際の店が一致しているか、というのが基本の見られ方です。営業時間、営業所の構造、接客の実態、店内の表示、そして従業者名簿の備付けと記載内容が対象になります。日々の点検記録そのものが求められるわけではありませんが、指摘を受けた項目について店として何をしていたかを示せる記録があると、説明の材料になります。

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