開店前、入口から店内をぐるっと一周してみてください。壁やドア、レジ横に貼られた紙やプレートのうち、どれが法律で掲示を求められているもので、どれがいつの間にかなんとなく貼ってあるものか。その場で区別がつく店長は、意外と多くありません。掲示物は一度揃えると景色になじみ、誰も中身を見なくなります。立入検査で指摘されて初めて、剥がれかけていたことに気づく。よくある話です。

風俗営業の店舗には、料金表示や18歳未満の立入禁止表示など、法令・条例や営業形態に応じた掲示・表示義務があります。問題になりやすいのは掲示があるかどうかより、その内容が今の料金・営業実態と一致し、読める状態を保てているかどうかです。

入口の表示から、料金表示、許可証と管理者まで、開店前点検に組み込むべき確認ポイントを見ていきましょう。掲示は貼る瞬間より、揃った状態を保ち続けるほうが、実は難しいものです。

入口の18歳未満立入禁止表示

まず入口です。風俗営業の営業所には、18歳未満の者が立ち入ってはならない旨を入口に表示する義務があります(風営法18条)。求人サイトやSNSでの採用時の年齢確認とは別に、来店者へ入口で示す物理的な表示です。

実務では、入口ドアの横や、券売機・受付の脇など、来店した人の目の高さに掲示している店が多いです。問題になりやすいのはサイズや文言そのものより、経年劣化です。屋外に面した入口のステッカーは日焼けで文字が薄くなり、雨や結露で端から剥がれます。半年前に貼ったものが、気づけば「立入」の二文字が消えかけている。掲示があること自体は間違っていないのに、読めない状態になっていれば、掲示していないのと変わりません。入口の表示は、貼った日ではなく今日の状態で見るものです。

屋外看板と一体になった入口だと、抜けはさらに起きやすくなります。看板の電飾が切れたら業者を呼んで直すのに、その脇の表示ステッカーが色あせていることには誰も気づかない。派手なほうに目が行って、地味な掲示は視界から外れます。入口まわりは、開店前に一度外から店を眺める係を決めておくと、こうした劣化に気づきやすくなります。中から見るのと外から見るのとでは、剥がれや汚れの見え方が違います。

店内の料金表示

次に店内です。営業に係る料金は、営業所内で客に見やすいように表示する義務があります(風営法17条)。表示すべき料金の種類は国家公安委員会規則で定められており、客が入店から会計までにいくらかかるのかを、客観的に把握できる程度に明確にしておく、という趣旨です。

キャバクラでいえば、セット料金、指名料、同伴やアフターに関わる料金、そしてサービス料(TAX)あたりが客の負担に直結します。たとえばセット60分5,000円、指名料2,000円、サービス料20%といった構成なら、それが客の目に入る形になっているか。基本形はメニューへの記載と、テーブルへの備え付けです。壁のプレートに主要料金を掲げ、卓上メニューで内訳を見せる、という二段構えの店もあります。

ここでの崩れ方は物理的なものが多いです。卓上メニューが酒やソースのシミでふやけて数字が読めない、ラミネートが割れて中の紙が抜けている、料金改定をしたのに古いメニューが何卓か混ざっている。ぼったくり系のトラブルや苦情の多くは、明確な悪意より先に、この「料金表示が曖昧だった」ところから始まります。会計時に「聞いていない」と言われて揉めるくらいなら、卓上メニューを月に一度全部差し替えるほうが安く済みます。

表示のしかたで見落とされやすいのが、主要な料金は大きく出しているのに、延長料金やサービス料を小さな字で隅に押し込むやり方です。店としては表示しているつもりでも、客が会計まで気づけない書き方だと、見やすく表示したことにはなりにくい。場内指名と本指名で金額が変わる店なら、その違いも卓上で確認できる状態にしておく。客が会計で初めて金額を知る、という場面をなくすことが、料金表示の目的です。

許可証と管理者

掲示物は客向けだけではありません。営業の許可を受けていることを示す許可証と、店の管理者が誰かを即答できる状態、この二つは検査で確認される側の項目です。許可証をどこに置き、どう扱うかには決まった形があるので、額に入れて事務所や受付付近に掲げている店が多いです。

ズレが生まれるのは、店に手を入れたときです。店名を変えた、内装をリニューアルした、レイアウトを大きく変えた——こうした変更には手続きが伴いますが、そこを放置すると、掲示している内容と実態が食い違います。よくあるのが、改装工事で許可証を額ごと外して倉庫にしまい、オープン後もそのまま、というパターン。壁は新しくなったのに、掲げるべきものが段ボールの中に眠っている。管理者が代わったのに掲示や届出が古いまま、というのも同じ構図です。管理者については、店として誰が選任されているかを即答できることが前提になります。名義だけ置いて実際は別の人が現場を回している、という状態は、掲示や届出と実態のズレそのものです。

立入検査では、名簿や帳簿と並んで、こうした掲示物も確認の対象になります。当日の流れや見られる書類は風営法の立入検査で確認される書類と当日の流れで整理しているので、あわせて見ておくと、掲示だけを単体で考えずに済みます。

貼るより、保つほうが難しい

掲示物の実務は、揃える瞬間より、揃った状態を保ち続けるほうが難しいのが実情です。開店時に一式そろえても、時間が経てば剥がれ、破れ、移転や改装で位置が変わり、料金改定でメニューが古くなります。誰かが「これ剥がれてますね」と言い出さない限り、崩れは静かに進みます。しかも崩れているときに限って、検査や苦情が来ます。

解決は根性論ではなく、確認するタイミングを固定することです。開店前チェックリストに「入口表示が読めるか」「卓上メニューが最新か」「許可証・管理者掲示が実態と合っているか」を一項目ずつ入れておけば、担当者が変わっても確認が続きます。チェックリスト自体の作り方は夜のお店の開店・閉店チェックリストを作る方法で扱っています。ただ、この確認を毎日欠かさず、担当者が変わっても同じ精度で続ける負担は小さくありません。紙のチェックリストは、書いたつもりで一項目飛ばしても後から誰も気づけない。その「掲示が読めない状態に誰も気づかない」をなくすために、私たちは開閉店点検システムを作っています。掲示物の確認を毎日のルーティンに組み込み、いつ誰が確認したかを履歴に残す。開店前の確認を口頭やその日の気分から切り離したいときは、一度相談してみてください。

掲示物は、店が客と法令の両方に向けて出している「うちはこういう店です」という宣言です。読めない宣言は、していないのと同じ。そこだけは押さえておいて損はありません。

よくある質問

掲示物のサイズや文言に決まりはありますか?

様式や細目は国家公安委員会規則や地域ごとの運用で定められており、管轄によって求められ方が異なる場合があります。自店で使う掲示物のサイズ・文言は、管轄警察署や行政書士に確認してから作成するのが確実です。

料金改定をしたら、いつまでにメニューを差し替えればいいですか?

法令上の猶予期間の定めはありませんが、実態と表示が食い違ったまま営業すること自体がリスクです。改定を決めた時点で、いつ・誰が差し替えるかを決め、古いメニューが混在しないよう即日か翌営業日までの差し替えを徹底するのが安全です。

移転や改装をしたら、掲示物も許可も出し直しが必要ですか?

店名変更や内装の大幅な変更、レイアウト変更などは手続きが必要になる場合があります。掲示物だけでなく許可の内容そのものに関わるため、工事や変更に着手する前に管轄警察署や行政書士に確認してください。

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  2. 2担当者がスマホで完了を記録
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